東大寺図書館所藏史料調査

昭和五十二年よりの継続として、七月二十二日より二十八日の間、東大寺図書館所蔵の記録聖教類の調査撮影を行った。今回は昨年度未了の薬師院文庫史料の内、記録(ヤ/2/231)〜(ヤ/2/305)、経疏部(ヤ/3/1)〜(ヤ/3/11)、系図及地図其他(ヤ4/1)〜(ヤ/4/26)、(ヤ/5/1)に加えて、薬師寺旧蔵未整理史料(西庄氏持参分・断簡十七括)及び東大寺図書館寄託寶珠院記録(141B/1/1)〜(141B/28/1)の調査・撮影を実施した。
 薬師院文庫未整理史料は、薬師院より主要な史料が東大寺図書館に寄贈され、分類が加えられた後に、院外西庄氏の許に置かれていた分と、院内に残されていた分が、重ねて薬師院史料として、図書館に寄せられたものである。史料の多くは近世に属するもので、冊子の形をとどめるものもあるが、概ね断簡であり、その数千八百点を越える。現在、史料個々の確認と、冊子の綴糸切れは、その復元等、整理作業の途上にある。
 寶珠院は、近世初頭に堂衆方子院として創立されて以来、現在に至るまで相承され、近世には、修二會の執行される堂宇として著名な、東大寺二月堂の管理の任を負うた。そこで二月堂修二會にかかわる記録、堂衆独自の法要等の記録が多く伝えられており、現在は寶珠院より東大寺図書館に寄託されている。そこで右記二群の史料について、中世に属するものを列挙しておきたい。

『東京大学史料編纂所報』第15号